《製造》稼働率に騙されると生産性を見失う。
製造部門の報告書では稼働率が記載されていることがある。これは稼働率を最大化して生産性を高めようという意図であろう。
しかしそもそも稼働率とは何であろうか、稼働率アップを目的にしてよいのであろうか。
稼働率とは単純に定式化するならば、設備リソースの実稼働時間を、利用可能な時間総数で割って求められる比率である。
稼働率で管理するとは、稼働率がいかに100%という限界に近づいているかで、工場のパフォーマンスを計る考え方である。
確かに機械設備の特性上、フル稼働に近ければ近いほどロスや不良率が下がり、生産効率が良くなるはずである。
しかしよく考えてみてほしい。もし同じ製品100個を2人の作業者が担当して、一人は1時間で首尾良く作り、他方は2時間かけて不手際に作った場合とで比べると、後者の方がその設備の稼働率が高くなるのだ。
しかし、誰がどう見ても、前者の方が優れている。かりに残りの1時間は遊んでいたとしても、である。
さらに、稼働率計算にはワナがある。見込み生産で動いている業種では工場がフル稼働して見かけ上は景気良く動いていても、実は製品在庫がどこか遠くの見えない倉庫に積み上がっていくだけという可能性がある。
会社全体では生産を売上につなげて初めて利潤が生じるのだから稼働率による管理は工場だけの局所最適化になる恐れが高い。
稼働率は受注量の従属的な判断数値であり生産性を管理するには工数管理が適している。
多く中小企業製造業としての問題を指摘すれば、大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしていることにあると言えるだろう。
需要が収縮している時期では間違った評価尺度で生産組織を管理してはいけない。
稼働率管理にはそういう落とし穴もあるということを踏まえて報告書に記載する数値は実績工数管理の結果を報告するようにお願いしたい。
実績工数管理は製造部門の重要業績評価指標(KPI)であり手の内に入れていただきたい。