中小企業は資金効率を考えるな!

《財務》中小企業は資金効率を考えるな。

中小企業は資金調達に苦労する。時には脂汗をかきながら尊大な金融機関に頭を下げて回らねばならない。

儲かっていれば金融機関など足蹴にしたいくらい腹が立つのも無理からぬところである。

儲かれば儲かったで税金という足かせがはめられる。

儲かったときにため込んでおいて万が一の時に使おうと思っても、キャッシュフローは思いどおりにならない。

経営が順調で資金繰りが楽になると当座においてあるキャッシュフローが惜しくなる。当座のキャッシュフローは利益を生み出さないので、経営者としては無理からでも投資を考えてしまう。

ここが中小企業での間違いの始まりだ。

キャッシュフローをモノやコトに変換するのが投資だ。換金性の低い投資にキャッシュフローをあててしまうと資金繰りが苦しくなる。

キャッシュがものに変わることで流動性を損ない、結果として首を絞めることになる。

経済本のROE(自己資本利益率)など中小企業にはあてはまらない。

吹けば飛ぶような中小企業は用心が上にも用心で、簿外に資金をしこたまため込むことだ。もちろん余力があれば税金などと言う見返りゼロのコストを払うより、と言うことだ。

中小企業はオーナー企業がほとんどである。上場していなければ株式は経営者とその一族が持っている。だれもROE(株主資本利益率)がどうのこうのとは言わない。

資金はため込むことが中小企業の生命線だ。そして本当に必要な時に一気に投資するのが中小企業の経営だと言えよう。

税金を払わずに資金を簿外にため込む手法は法人契約の生命保険がベストである。

安全性、換金性、損金性、課税繰り延べ効果においては法人契約の生命保険の右に出るものはないだろう。

生命保険でため込んでおけば、経営者たる自分が役員退職金を受け取る時にも解約返戻金の雑収入をあてこめばよいだけであるから、会社の財務に負担をかけないで済む。

後継者が軌道に乗せた会社から、役員退職金をごっそり抜くわけだから、早くから計画的な積み立てが必要である。

損金で簿外に積立、解約返戻金の雑収入を役員退職金にあてればこれまた損金である。

簿外に資金をため込むといかにも資金効率が悪化しているように見える。

しかし中小企業は生き延びてなんぼの世界である。

法人契約の生命保険で緊急予備資金を簿外に積立、万が一に備えておき、自分が退職するときには解約返戻金で役員退職金に当て込む。

一石三鳥と言える手法であれば、資金効率などという余迷い事は中小企業にはあてはまらないのである。

製造メーカーは自社製品の価値を知れ。

《営業》製造メーカーは自社製品の社内加工益を利益と考えよ。

営業は会社のリーダーであるとは本サイトの基本的主張である。

営業は売上もさることなら利益を稼いでこそ責任が果たせる。

製造メーカーの営業たるもの管理用の粗利だけを追うようではリーダーたる資格に欠けるといわねばならない。

 

製造メーカーの営業は会社全体に目を配り、財務的な知識を押さてえいなくてはならない。

会社として儲けるにはどういう営業をすればよいか、何を売ればより儲かるかを知らねばならない。

製造メーカーには自社で製造した「製品」と仕入れてきて転売する「商品」がある。

営業にしてみれば商品を売ることは手間がかからず製造と交渉したりする手間が省けるので、売上だけを追うならば商品販売は営業にとってわかりやすいしコントロールしやすいのである。

しかしこの判断には製造メーカーの営業として大きな判断の誤りが潜んでいる。

製造メーカーが製造する製品の原価には工場の経費が含まれている。会社にとればこれも儲けになる。いわゆる社内加工益と言われる原価である。

商品販売で粗利が18%であれば、会社の構造にもよるが販管費を回収するだけの粗利とは言えない。

製品販売の場合は原価の中に製造のコストが含まれており、同じ18%でも価値が全く異なる事を理解しなくてはいけない。

製造メーカーは認識の甘い営業部長を据えると、会社全体の利益が見えずに目先の粗利を追うような営業指導をする。

結果として安易な売上と言うべき商品販売に営業の時間を割くことになり、商品販売比率の増加に伴い会社としての財務的な売上総利益は日々低下していくことになる。

製造メーカーの目標には自社製品販売強化を掲げているものがあるが、その本質的理由を再度理解してほしい。

自社の工場で製造する製品は同じ粗利率でも商品の2倍から3倍の価値がある。
繰り返すが、なぜなら原価に工場の経費がまるまる含まれているからである。

さらに言えば工場の人件費や工場建設に投資した減価償却費などが原価に含まれているのである。設備投資を回収するには自社製品の販売比率を上げることが最も効率的である。

自社製品の販売を現10%引き上げれば利益は大きく違ってくる。製品の販売比率を営業の評価基準として新たに「営業粗利貢献ポイント制」の導入を検討するとよい。

これにより営業の評価基準を明確にすることで自社製品の販売強化を一層進めることができる。

昨対管理と予算管理の重要性。

《営業》営業管理は昨対比較を卒業せよ!

営業の予算管理において昨対比較をすると判断を誤るとは以前書いた。

中小企業でも規模が小さいうちは経費予算も売上げも昨対比較で検証しておけば大きな判断の誤りにはならないだろう。

特に売上が右肩上がりの折には問題はない。

しかし、時代の潮目が変わり売り上げの安定性がなくなると、経営という視点においては昨対比較では比較の意味がなくなる。

売上予算があれば売上予算に対する経費予算があるべきであり、予算との差異を検証するのが正しい経営といえるだろう。

昨対をクリアしても予算をクリアしなければ目標の営業利益は出ないのである。

ある会社では上期を終了して、売上は予算に対し90%である。

ということは下期で上期の不足分をおぎなって予算を達成するためには対予算110%を実現しないと目標に届かないことになる。

ところが昨対は101%だとか、救いがたい安ど感に安住している。会社全体の財務が見えない営業管理者は失格ということになるであろう。

実績から見てこれは大変な数字である。作対クリアで満足する習慣が身に付いた営業は飛躍できない。

もとから予算達成する気がないと言われても仕方がないのではないかと指弾せざるを得ない。

営業の責任として下期が始まる前に期首に設定した予算を達成する戦略を再構築する必要があるのではないかと思う。

作対クリアで満足すれば結果は作対割れになることが往々にしてありうる。

自然の帰結として下を見ればバーは下がる。それはこれまでの経験で明らかである。

目標を下げてしまっては予算も何もありはしない。

価格改定を進めつつ売り上げを確保していくことは実際容易な道のりではない。しかし作対に満足することなく予算達成を目標にしてこそ営業としての数字はついてくる。

欠品情報が招く責任回避。

《製造》欠品情報は諸刃の剣となった。

ある製造メーカーでは多品種小ロット対応を差別化の強みとしていた。

多品種小ロット対応を戦略として目指してきた訳ではなく、顧客の無理を聞いてきて、どうにかこうにかやりくりしてきた結果の多品種小ロットであるから、製造現場がきちんとした製造計画と理論があって運営できているということではない。

従って工場の管理者が変わりでもしようものなら、やりくりに支障が出て欠品の嵐になってしまう。

そもそも製造というものは生産性を考えれば製造ロットをあげようとする考えが支配的になる。

しかし製造ロットが大きくなれば在庫の増加と食品製造などでは賞味期限問題が出てくるので、常に生産性と製造ロットの大きさはトレードオフの関係になる。

慣れない製造管理者は欠品を恐れるあまり、多めに製造しようとしてしまう。その結果在庫が増加し小ロットが排除され欠品につながる。財務的にもキャッシュフローを圧迫する要因になる。

小ロット対応に力を入れれば主力アイテム欠品などと言う許されざる事態を招くことになる。ここに多品種小ロット対応工場の製造管理者の難しさがある。

欠品の情報が見えないと営業も顧客もイライラがつのることになる。

突然の欠品は顧客に甚だしい迷惑をかけ、場合によっては取引停止まで発展することすら考えられる。

そこで同報メール機能を活用して「欠品情報」というサブジェクトで欠品の正確な情報と納品可能な日を案内するシステムをスタートすると欠品情報の情報流はよくなり急ぎ顧客とそうでない顧客との調整も可能になる。

良いことばかりかと思いきや、そういうものでもない。

安易に欠品情報が流れるようになり、欠品の責任が希薄になってしまう。

工場の現場では欠品の重大性の認識が薄れ、仕方がないことという空気が生まれてくる。こうなると多品種小ロットのリスクが露呈し顧客不満足を量産することになる。

そういう工場は会議ごとの報告書に書かれている通り、問題が山積している。

実際の現場では目先の業務に追われて、まるでもがくように、いろいろと取り組んではいるが成果として見えてきてはいない。

相変わらず欠品情報は流れているし残業も増えるばかりである。

工場によれば事態を憂いた中堅社員の改善提案のなかで、製造計画の遅れを指摘しており、これを修復し欠品を削減するには期間限定で派遣社員を2名採用し年末の繁忙期に対応できる製造を行う、というような進言まで出てくるようになる。

何も知らない若手ではない中堅社員が欠品の状況を見るに見かねて、年末の繁忙期を憂慮してのことであろうと思う。

あいまいな目算で年末に突入し欠品だらけになれば、迷惑をこうむるのは営業だけでなくお客様であり会社の信用失墜につながるのである。

多品種小ロットを強みにするというなら企業の戦略として欠品率を制御すべきである。欠品情報の提供が悪いのではなく、製造管理が未熟なだけである。