《製造》欠品情報は諸刃の剣となった。
ある製造メーカーでは多品種小ロット対応を差別化の強みとしていた。
多品種小ロット対応を戦略として目指してきた訳ではなく、顧客の無理を聞いてきて、どうにかこうにかやりくりしてきた結果の多品種小ロットであるから、製造現場がきちんとした製造計画と理論があって運営できているということではない。
従って工場の管理者が変わりでもしようものなら、やりくりに支障が出て欠品の嵐になってしまう。
そもそも製造というものは生産性を考えれば製造ロットをあげようとする考えが支配的になる。
しかし製造ロットが大きくなれば在庫の増加と食品製造などでは賞味期限問題が出てくるので、常に生産性と製造ロットの大きさはトレードオフの関係になる。
慣れない製造管理者は欠品を恐れるあまり、多めに製造しようとしてしまう。その結果在庫が増加し小ロットが排除され欠品につながる。財務的にもキャッシュフローを圧迫する要因になる。
小ロット対応に力を入れれば主力アイテム欠品などと言う許されざる事態を招くことになる。ここに多品種小ロット対応工場の製造管理者の難しさがある。
欠品の情報が見えないと営業も顧客もイライラがつのることになる。
突然の欠品は顧客に甚だしい迷惑をかけ、場合によっては取引停止まで発展することすら考えられる。
そこで同報メール機能を活用して「欠品情報」というサブジェクトで欠品の正確な情報と納品可能な日を案内するシステムをスタートすると欠品情報の情報流はよくなり急ぎ顧客とそうでない顧客との調整も可能になる。
良いことばかりかと思いきや、そういうものでもない。
安易に欠品情報が流れるようになり、欠品の責任が希薄になってしまう。
工場の現場では欠品の重大性の認識が薄れ、仕方がないことという空気が生まれてくる。こうなると多品種小ロットのリスクが露呈し顧客不満足を量産することになる。
そういう工場は会議ごとの報告書に書かれている通り、問題が山積している。
実際の現場では目先の業務に追われて、まるでもがくように、いろいろと取り組んではいるが成果として見えてきてはいない。
相変わらず欠品情報は流れているし残業も増えるばかりである。
工場によれば事態を憂いた中堅社員の改善提案のなかで、製造計画の遅れを指摘しており、これを修復し欠品を削減するには期間限定で派遣社員を2名採用し年末の繁忙期に対応できる製造を行う、というような進言まで出てくるようになる。
何も知らない若手ではない中堅社員が欠品の状況を見るに見かねて、年末の繁忙期を憂慮してのことであろうと思う。
あいまいな目算で年末に突入し欠品だらけになれば、迷惑をこうむるのは営業だけでなくお客様であり会社の信用失墜につながるのである。