設備投資と工場の生産性。

《製造》設備投資で生産性が向上するとは限らない。

中小企業は設備投資を積極的にしないのが通常である。利益が出ても設備投資に回さず相変わらず老朽化した設備で非効率な生産を継続する事例が多い。

そういう工場が新規の機械設備を導入すると合理化できるどころか生産性が低下する場合がある。

ある工場では新たな設備が導入され作業が合理化された面はあるが、改善・改革がすすむと本来の適正な人員数が見えにくくなっている。設備投資を行った場合それを回収してさらに生産性を上げることで利益を出していく必要がある。

生産量を大幅にアップするとか効率化により労務費を削減するなどの成果が求められる。

◆ 機械設備とボトルネックが見えないと生産性は改善できない。

ところが現場では確かに導入した機械設備により生産能力は飛躍的にアップしたが、関連の製造ラインとそれに伴う人員配置がうまく機能せず新たなボトルネックの発生で生産量が増加したものの、人件費も増加している。

また新規の機械の生産能力が過剰になり、受注数のレベルに対応していないので稼働日数は月の1/3に満たない有様である。

その結果、無用な手待ち時間や手空き時間が増加し、目標とする残業削減の時期と設備投資による成果が出る時期とが必ずしも一致しないという新たな問題が浮上する。

新規の機械設備を導入した工場の残業報告を見ると昨年の実績と比べて削減できたとは言えない現状がある。機械設備は適切に制御され作業担当者が習熟し、作業の流れに無駄がなくなるまでは3か月から半年はかかると考えるべきである。

また合理化を指向する設備投資は将来の受注見込みとラインのボトルネックを見極め、精度の高いシミュレーションを繰り返しておかなくてはならない。

営業活動に新規開拓は欠かせない。

《営業》営業活動の基本は新規開拓、できなければじり貧運命。

営業活動においては売上を継続的に伸長させるには新規開拓が欠かせない。

既存顧客だけをフォローしていたのでは減少得意先が伸長得意先を上回ることになる。

売上とは伸ばしていくべきものである。新規開拓を理解しないと売り上げはじり貧の運命をたどることは避けられない。

新規開拓は「新規」の定義を明確にして、新規開拓の専門部署または専任の担者を設け、課題・ノルマを明確にすることがよく行われる。これは新規開拓と既存顧客の両者を担当すると、営業担当者の役割が不明確になり、新規開拓の実績が上がらない言い訳になってしまうためである。

◆ 新規開拓は組織的に取り組む。

新規開拓においても営業担当者が個人レベルで営業情報を集めるのではなく、組織的に集めることが効率を高める。

コンサル事例ではいくつかの大手の案件があり受注見込としてカウントしていたものが流れたケースもある。このような Aランクの案件が失注した場合は「失注分析」を行い、製販会議などで徹底的な敗因分析を通じて競争相手に比べて何が駄目だったのかを把握し、これを改善することにより企業体質の強化を行うことが重要である。

どこの中小企業も仕入れ原料の値上がりや為替の影響という外部要因を受ける。

営業に責任があるわけではないが値上げは営業の責任となる。

しかし新規開拓をする上では値上げは営業活動の足かせになる。営業が必死で困難な値上げに取り組んでいる実情は、よく理解できるがここは視野を広げて新規開拓も積極的に進めることで将来の売上げにつなげるような営業活動を期待したい。そのためには組織的な新規開拓の体制と、評価基準の明確化は必須である。

IT資産管理とセキュリティー

《情報システム》IT資産管理とセキュリティーは荷が重い。

中小企業ではIT管理とは名ばかりで、パッケージシステムをカスタマイズしたものをベンダー任せで運用しているケースがほとんどである。

販売管理システム、生産管理システムもIT管理とは程遠いレベルで運用されており、リスクなどはどこ吹く風である。

社内にSEどころかシステム課もない、総部課長がシステム管理者を兼務していたりする。

ところが企業は成長し規模も大きくなる。それに伴い一度システム障害が発生すれば取り返しがつかない一大事になる事を理解しなくてはいけない。

システム投資は目に見えない設備投資でありながら巨額になりがちである。最初にシステムを導入するときは人員削減等の合理化が見えているが、システムの安定稼働にかかる安全性投資やセキュリティー関係の投資は費用対効果が見えない。

中小企業経営者は臆病なくせにシステムリスクを理解しようとしないし、見ようともしない。事態が悪化してから責任転嫁するのである。

最近は高機能かつ安価なシステム機器やPCが販売されているし、クラウドも進んでいる。しかし思いがけないところにつまずきの石があるのがシステム管理である。

ITを管理しようとすればまずIT資産をハードとソフトにわけてリストアップする必要がある。これが、これまで適当にその都度導入してきた企業には大変な作業になる。

IT資産管理は各事業所を含め各部署のネットワーク図を作成し全体の把握をする必要がある。担当者を決めて根気よく進めればハード面はほぼリスト化できるであろうが、ソフト面に手こずることになる。会社がそれまで管理や規制を課してこないとソフトウェアは各部署それぞれ野放し状態になっているはずであるからである。

しかしよく考えてみれば、端末もプリンタも携帯やipadも社員にあくまで貸与しているのであり会社管理の資産である。

基本的なことから指導し私的な利用によるリスクを排除しなくてはならない。ハードは大切に取り扱う責任があることは言うまでもないが、定期的な清掃を指導することが重要である。PC端末はファンが回っており吸気口に埃が溜まりやすい。ここを掃除機などで吸ってやることで発熱を防止することができる。

また未知のプログラムをインストールしたり配線を変更したり置場を移動させることは基本的に禁止し、移動が必要なときはシステム管理者に連絡し指示を受けるよう徹底しないと、IT資産管理は維持できない。

IT資産管理になれていない中小企業では、各部署に縛りを入れるとき抵抗がある。しかし妥協してはいけない。IT資産は会社の財産であり、同時にリスクを管理するためにはルールを守ることを繰り返し教育する必要がある。