《総務》新電力、市場連動メニュー暴騰騒動。
経営では常にコストダウンをはからなくてはならない。様々なコストを定期的に見直すことで無駄な費用を削減できるようになる。それは聖域なき削減でなくてはならないから電気料金も同様である。
ところが、コスト削減は様々なリスクをはらんでいる。より安く電力を調達するためには、試算すれば固定メニューより市場連動メニューの方がコスト削減効果が大きいとなる。そうなればよりコスト削減をすすめるために市場連動メニューを選択することは妥当な選択のように見える。
世間の通り相場として、ハイリスクハイリターンということを忘れてはいけない。今回はある会社が昨年末に関西電力の高圧特別契約から新電力の市場連動メニューに乗り換えたとたんに電力調達コストの暴騰が始まった事例である。
調達単価が何倍にもなったため、電気料金の請求書は、これまでの数倍という見たこともないような高額になり、それが2カ月以上続いたわけである。いきなりの高額請求で、新電力に乗り換えることで得られるはずだったコストダウンの一年分以上をいきなり吐き出してしまったことになる。
慌てて契約書を確認しても、市場連動メニューを選択した責任が自己責任であることを確認するだけになる。どうすればよいのか、どうすればより安全に固定メニューに戻れるのかを調べるが、明快な答えが見つかるわけでもない。新電力の市場連動メニューを選択した責任が重くのしかかってくる。
新電力はリスク説明が不十分であり、相応の責任があるから電気料金の高騰分を一部負担するよう交渉を始めるが、具体的な解決策は見えてこない。このままでは、さらなる電気料金高騰が続きかねないので、勢い新電力を解約することになる。
電力業界の事情を知らないので、電気の供給が止まれば経営の一大事とばかり電気供給の仕組みを調べるとちゃんと緊急避難的な電気の供給体制があることが判明する。いわゆる電力送配電株式会社による電気最終保障供給契約である。
電線が切れるわけではないので、供給は継続されるということだ。ただし緊急避難的に電気最終保障供給契約を締結すれば割高であり、供給期限は一年以内とされている。その間に新たに新電力と契約すれば、費用はかかるが電気供給という面では一安心となる。
ドタバタのなかで電気の供給システムがどうなっているか、旧の電力会社と新電力との関係も見えてくる。また電気料金の自由化というものの、安定的な競争環境が成立していない実情も見えてくる。今回の電気代暴騰の背景では、新電力の資金繰りが一気に悪化し社会問題化した構図も見えてきた。
コストダウンと言えども安易な判断はケガの元。より慎重にリスク判断をすべきであることが見えてくる。