長期不良在庫と再生ルールの怪?

《製造》長期不良在庫と再生ルールの怪?

中小企業の現場や工場を訪問すると机上ではわからない問題があらわになってくる。

特に繁忙期に工場や倉庫内に入ると繁忙期の対策もさることながら現場の実態、在庫状況、特に不良在庫が見えてくる。

時間をかけ念入りに確認し問いただしていくと廃棄すべき在庫と再生放置品が山と出て来ることがある。

食品などの製造メーカーは不適合品も再生という独自の理屈で良品としての製品に変換してしまう。家庭で言えば残り物で野菜炒めを料理するような具合だ。

ゆえに不良在庫化していても、いつか再生利用する予定であるから倉庫の奥やラックの最上段に押し込めて忘れてしまうことがある。

それを決算などの棚卸で指摘を受けあわてて再生する。一般消費者からすれば不思議な処置である。賞味期限はどうなっているのかと思うのも当然である。

◆再生ルールは工場都合

実際の現場では再生すれば賞味期限もリセットされるという都合のよい理屈がある。

これが不良在庫を大量に保存してしまう要因になっている。システムで在庫管理をしていればこの手の長期在庫は不良在庫としてリストアップ可能であるのだが、これを管理し長期在庫を指摘し指導するものがいないのが中小企業の悲しさである。

再生ルールというものがある、文書化してしまうと何かと問題になってもいけないので暗黙のルール化しているところが多い。

しかし経営という視点からすれば、食品製造業では品質的に基準を守りつつロスを少なくしていくことが利益につながるのである。

言ってみれば再生放置品であるが、これはため込んでしまうと処理が一層難しくなる。また長期にわたって動かない在庫で倉庫を占有されることになり、倉庫料ロスも無視できない大きさとなる。

◆長期在庫は利益を失う。

一般的に粗利が23%あっても3か月保管すると倉庫費用で利益が飛んでしまうと言われている。保管期間6カ月超ともなれば破棄したほうがましということになる。ここに不良在庫の倉庫占有は現場でしっかり押さえていく理由がある。

◆棚外処理は資産の隠ぺいに当たる。

もうひとつ言っておかねばならないことがある。製造工場の在庫の中には棚外、あるいはノーカウント品がある。

これは全くおかしい。言わば会社の資産の隠ぺいである。会社として在庫はすべて棚卸して報告するよう指導してきたが実践されてない。

棚外は廃棄を前提としている。廃棄すべきかどうかは会社側が報告を受けて財務的に判断するべきものである。工場長といえども、無断で棚外という処理をするような場合は管理責任者の責任を問わねばならない。

工場管理者の聞き力を高めよ。

《製造》工場管理者の聞き力を高めよ。


中小企業ではオーナーや工場長の発言力が強すぎて、会議の場で部下の意見が出ないことがよくある。聞かなければ発言しないし、本音を聞くと「どうせ言っても何も変わらない。煙たがられて評価が下がるだけ。」という声も聞こえる。

工場管理者が部下の意見を真摯に聞くことで、工場の定例会議等では担当リーダーが自分の意見を積極的に発言するようになってくる。

これが浸透すると意識改革という意味では非常に大きな前進である。

中小企業の製造現場を変えるにはどうしても自ら動く自律型の人間を育てなくてはならない。なぜなら工場管理者はすべてを見ることはできないから信頼できる部下に依存するほかないのである。

意見が採用されたり、上司から褒められると、部下の報告書の記載内容も前進が感じられる内容となるものなのである。

ピンチとチャンスは相対的なものである。今の状況をチャンスであると人間の意志で決めてよい。すべての壁は自分が作る。過去のやり方、知識、経験が通じないのは今までにない新しいやり方を発見するためだととらえればよい。

他人に原因を求めると問題はもともと解決しない。原因は自分にあると思ったときに解決への道は開ける。

工場管理者はこの点を肝に銘じていただきたい。

一言で言えば「聞き力を高めよ。」ということになる。

購買業務の合理化が企業を変える。

《購買部》購買業務の合理化が企業を変える。

購買部部門目標にも購買業務の合理化に関する記述がない。ということがどこの企業にもみられる。

購買は社内の特権部署として君臨していることが多い。購買担当者も長年変わらないというケースも見かける。この結果購買業務は属人化する。

合理化すべき問題点が見えなくなる。

購買と言えども視点を変えて合理化するためにはジョブローテーションである。

購買業務は仕入開発的な不定型の業務(ソーシング)と定型発注的な業務(パーチェシング)に区分できる。

ソーシングとは、商品仕様や取引条件などの購買の条件を規定し、取引先の選択や交渉によって最も適切な条件を獲得することである。

購買に携わる部門の最も重要な業務である。

一方パーチェシングとは、ソーシングによって得られた規準に沿って実行される日常の購買実務であり、購買全体が基準に沿って実行されるための地道な業務である。

この二つの業務区分があまり意識されていないために発生する混乱が非常に多い。

購買の改善に取り組むためには、この業務毎の違いを理解することが大切である。

すなわち定型的な発注業務はルールと仕組みありきでありいくらでも合理化が可能である。

無駄な作業がないか、重複する作業はないか、本当にその作業は人が行う必要があるのかを検証いただきたい。その結果システム的に対応すべきは改革いただきたい。

稼働率に騙されると生産性を見失う。

《製造》稼働率に騙されると生産性を見失う。

製造部門の報告書では稼働率が記載されていることがある。これは稼働率を最大化して生産性を高めようという意図であろう。

しかしそもそも稼働率とは何であろうか、稼働率アップを目的にしてよいのであろうか。

稼働率とは単純に定式化するならば、設備リソースの実稼働時間を、利用可能な時間総数で割って求められる比率である。

 

稼働率で管理するとは、稼働率がいかに100%という限界に近づいているかで、工場のパフォーマンスを計る考え方である。

確かに機械設備の特性上、フル稼働に近ければ近いほどロスや不良率が下がり、生産効率が良くなるはずである。

しかしよく考えてみてほしい。もし同じ製品100個を2人の作業者が担当して、一人は1時間で首尾良く作り、他方は2時間かけて不手際に作った場合とで比べると、後者の方がその設備の稼働率が高くなるのだ。

しかし、誰がどう見ても、前者の方が優れている。かりに残りの1時間は遊んでいたとしても、である。

さらに、稼働率計算にはワナがある。見込み生産で動いている業種では工場がフル稼働して見かけ上は景気良く動いていても、実は製品在庫がどこか遠くの見えない倉庫に積み上がっていくだけという可能性がある。

会社全体では生産を売上につなげて初めて利潤が生じるのだから稼働率による管理は工場だけの局所最適化になる恐れが高い。

稼働率は受注量の従属的な判断数値であり生産性を管理するには工数管理が適している。

多く中小企業製造業としての問題を指摘すれば、大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしていることにあると言えるだろう。

需要が収縮している時期では間違った評価尺度で生産組織を管理してはいけない。

稼働率管理にはそういう落とし穴もあるということを踏まえて報告書に記載する数値は実績工数管理の結果を報告するようにお願いしたい。

実績工数管理は製造部門の重要業績評価指標(KPI)であり手の内に入れていただきたい。

食品製造業はクレームに敏感になれ!

《製造》食品製造業はクレームに敏感になれ!

気温が上がり虫等の異物混入や腐敗変敗などのクレームが多発する時期である。

製造においてクレームと食品事故を区別できていない企業多いが、その対応は全く異なるので意識的な区別が必要である。

概ねクレームとは大なり小なり食品事故である。近年食品事故は大事故化しこれまではお詫びで済んだことが大事となり回収事故に発展するケースも少なくない。

よって営業を含め管理者はPL保険の基本的な知識を押さえておく必要がある。

PL保険とは生産物賠償責任保険と呼ばれ第三者に引き渡した物や製品に起因して賠償責任を負担した場合の損害を、身体障害または財物損壊が生じることを条件としてカバーする賠償責任保険である。

ポイントは補償の対象とするには直接損害が必要であり 財物損壊を伴わない使用不能損害は対象外であるということである。

食品業界に限定してもっとわかりやすく言うと「食中毒保険」ということになる。異物や腐敗が問題ではなく対人保障として食中毒などのために治療や入院費用が発生し損害賠償を求められた場合に保険適用になるということである。

第三者の身体障害、対象生産物・製品の財物損壊のいずれも伴わない損害は対象にならないということが原則である。

多くの中小企業は中小企業PL保険制度に加入している。

PL保険としては対人対物1億円、リコール特約を付加しており3千万円を加入していたとしても、リコール特約は微妙な判断を含んでおり生産物の自然の消耗または性質による蒸れ・カビ・腐敗等は対象外となるが、賞味期限の誤表示はリコールの対象となる場合があるという言い方になる。

リコールには厳しい条件が付いており行政庁に対する文書による届け出、リコール実施についての行政庁の回収命令、新聞等の公共媒体による社告が条件になる。

すなわち得意先から言われて行う私的な回収は条件的に保険の対象としては無理があるということである。

食品事故の発生やリコールの恐れがあるときは保険会社に連絡することが条件であり遅滞なく報告する必要がある。また時系列での記録、証拠写真等の資料も必要になるので、気を付けていただきたいところである。